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マウスピース矯正の7つのデメリット|専門医が教える対処法

マウスピース矯正とは?メリットと特徴を理解しよう

マウスピース矯正は、透明な装置を使って歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。従来のワイヤー矯正と比べて目立ちにくく、取り外しができるという大きな特徴があります。

近年、多くの方に選ばれるようになったマウスピース矯正ですが、その魅力は見た目の美しさだけではありません。食事や歯磨きの際に取り外せるため、口腔ケアがしやすく、日常生活への影響が少ないというメリットがあるのです。

しかし、どんな治療法にもメリットとデメリットがあるものです。マウスピース矯正を検討されている方は、その特徴を正しく理解した上で、ご自身に合った矯正方法を選ぶことが大切です。

マウスピース矯正の最大の特徴は、透明で目立ちにくいことと、自分で装着と取り外しができる点です。この自由度の高さが多くの患者さんに支持されています。

それでは、マウスピース矯正の7つのデメリットと、それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。矯正治療を成功させるためには、これらのデメリットをしっかり理解し、適切に対応することが重要です。

デメリット1:自己管理が必要な装着時間

マウスピース矯正の最大のデメリットは、1日20時間以上の装着が必要なことです。

ワイヤー矯正と違い、マウスピース矯正は自分で取り外しができるため、装着時間を自分で管理しなければなりません。食事や歯磨きの時間以外は、常にマウスピースを装着している必要があるのです。これは、矯正治療の成功に直結する重要なポイントです。

装着時間不足による影響

装着時間が不足すると、歯が計画通りに動かなくなり、治療期間が延びてしまう可能性があります。マウスピースを装着している時間だけ歯に力が加わり、歯が移動する仕組みだからです。

例えば、1日に10時間しか装着していないと、治療に必要な期間が大幅に延びてしまい、追加の費用が発生することもあります。

装着時間を守れるかどうかは、あなた自身の意識と習慣にかかっています。自己管理が苦手な方には、少しハードルが高いかもしれません。

効果的な対処法

装着時間を確保するためには、日常生活の中で習慣化することが大切です。食事と歯磨きの時間以外は常に装着するというルーティンを作りましょう。

スマートフォンのリマインダー機能を活用して、装着を忘れないようにする方法も効果的です。また、外出先にも予備のケースを持ち歩くことで、いつでもマウスピースを安全に保管できます。

私の臨床経験では、装着時間を守れる患者さんほど、治療期間が短く、満足度も高い傾向にあります。自己管理の習慣づけが、マウスピース矯正成功の鍵なのです。

デメリット2:マウスピースの紛失・破損リスク

マウスピース矯正のもう一つの大きなデメリットは、マウスピースを紛失したり破損したりするリスクがあることです。

取り外し可能という便利さの裏側には、このようなリスクが潜んでいます。特に食事中や歯磨き中など、マウスピースを外すタイミングで紛失しやすくなります。レストランやカフェでティッシュに包んだマウスピースをうっかり捨ててしまったという事例も少なくありません。

紛失・破損時の対応

マウスピースを紛失・破損した場合、再作製には追加費用がかかることがあります。また、新しいマウスピースが届くまでの間、治療が中断してしまうため、全体の治療期間が延びてしまう可能性もあるのです。

特に子どもや忙しい方は、紛失のリスクが高くなりますので注意が必要です。

予防と対策

紛失・破損を防ぐためには、専用のケースを常に携帯し、マウスピースを外した際には必ずケースに保管する習慣をつけましょう。ポケットやナプキンに包むのは避けてください。

また、予備のマウスピースを持っておくことも有効な対策です。前段階のマウスピースを捨てずに保管しておけば、万が一の際の応急処置として使用できます。

マウスピースの取り扱いに慣れるまでは少し神経質になるかもしれませんが、習慣になれば自然と注意して扱えるようになりますよ。

デメリット3:適応症例の限界

マウスピース矯正は万能ではありません。治療できる症例には限界があるのです。

重度の叢生(歯並びの乱れ)や、顎の大きなズレがある場合、マウスピース矯正だけでは十分な治療効果が得られないことがあります。このような複雑な症例では、従来のワイヤー矯正や外科的処置との併用が必要になることも少なくありません。

マウスピース矯正が苦手とする症例

具体的には、以下のような症例ではマウスピース矯正単独での治療が難しいことがあります。

  • 重度の叢生(歯のデコボコや重なりが著しい状態)
  • 左右に顎がずれている症例
  • 上下顎前突(骨格性の出っ歯や受け口)
  • 歯根の移動量が大きいケース
  • 顎変形症など外科手術が必要なケース

これらの症例では、マウスピース矯正だけでは十分な効果が得られないことがあります。

適切な治療法の選択

このようなデメリットに対しては、事前の精密な検査と診断が重要です。矯正専門医による適切な診断を受け、ご自身の症例がマウスピース矯正に適しているかどうかを確認しましょう。

場合によっては、マウスピース矯正とワイヤー矯正を組み合わせたハイブリッド治療が効果的なこともあります。例えば、初期段階をワイヤー矯正で行い、後半をマウスピース矯正に切り替えるという方法です。

矯正治療は一人ひとりの歯並びや骨格に合わせたオーダーメイドの治療です。自分に最適な治療法を専門医と相談しながら選びましょう。

デメリット4:奥歯の噛み合わせに影響が出ることも

マウスピース矯正では、治療中や治療終了時に奥歯の噛み合わせに違和感を覚えることがあります。

これは、マウスピース型の矯正装置が常に歯の表面を覆っているため、臼歯部(奥歯)が圧下しやすいという特性によるものです。その結果、治療終了時に臼歯がしっかり噛み合わないという現象が起こることがあるのです。

噛み合わせの違和感

奥歯の噛み合わせに違和感が生じると、食事の際に不便を感じたり、顎関節に負担がかかったりすることがあります。特に硬いものを噛む際に違和感を感じやすくなります。

ただし、この症状は一時的なものであることが多く、時間の経過とともに改善していくケースがほとんどです。

対処法と予防策

噛み合わせの問題に対しては、補助装置の使用が効果的です。上下の歯をゴムで引っ張り出す装置を使用することで、噛み合わせの改善が期待できます。

また、定期的な通院で噛み合わせのチェックを受けることも重要です。早期に問題を発見し、適切な対処をすることで、長期的な問題を防ぐことができます。

私の臨床では、治療計画の段階から噛み合わせの変化を予測し、必要に応じて補助装置の使用を組み込むことで、このような問題を最小限に抑えるよう心がけています。

デメリット5:歯根が露出するリスク

マウスピース矯正では、歯槽骨から歯根が露出する現象が起きる可能性があります。

これは、マウスピース矯正が歯を傾斜移動ではなく、歯体移動させる特性を持つためです。歯体移動とは、歯を根っこから動かす方法で、これ自体はマウスピース矯正の大きなメリットでもあります。

歯根露出のメカニズム

非抜歯矯正時にスペースを空けた状態で歯を奥歯の方に移動させることができるのは、マウスピース矯正の利点です。しかし、歯の移動方向や骨の厚みによっては、歯根が歯槽骨から出てしまうリスクがあります。

歯根が露出すると、見た目の問題だけでなく、知覚過敏や歯周病のリスク増加といった機能的な問題も生じる可能性があります。

予防と対策

このリスクを避けるためには、治療前にCT検査などで骨の厚みや歯の移動方向を詳細に把握することが重要です。事前の精密な検査と診断に基づいた適切な治療計画を立てることで、歯根露出のリスクを大幅に減らすことができます。

また、定期的な通院で歯の移動状態をチェックし、必要に応じて治療計画を調整することも大切です。専門医による適切な管理のもとで治療を進めることで、このようなリスクを最小限に抑えることができます。

歯の健康を長期的に守るためには、見た目の改善だけでなく、歯根や骨の健康にも配慮した総合的な治療が必要なのです。

デメリット6:飲食の制限と口腔ケアの必要性

マウスピース矯正中は、飲食に関するいくつかの制限があります。

マウスピースを装着したまま食事をすることはできません。また、水以外の飲み物を飲む際にもマウスピースを外す必要があります。これは、食べ物や飲み物がマウスピースと歯の間に入り込み、虫歯や歯周病のリスクを高めるためです。

飲食制限による影響

1日20時間以上の装着が必要なため、食事や飲み物の時間は限られます。特にコーヒーや紅茶などを少しずつ飲む習慣がある方は、生活スタイルの変更が必要になるかもしれません。

また、食後にはマウスピースを装着する前に必ず歯磨きをする必要があります。外出先での食事後に歯磨きができない場合は、少なくともうがいをしてからマウスピースを装着するようにしましょう。

効果的な口腔ケア方法

このデメリットに対しては、携帯用の歯ブラシやマウスウォッシュを常に持ち歩くことをおすすめします。外出先でも簡単に口腔ケアができるよう準備しておくことで、マウスピース矯正中の生活がより快適になります。

また、マウスピース自体の清潔を保つことも重要です。マウスピースは専用の洗浄剤を使用するか、中性洗剤で優しく洗いましょう。熱湯や強い洗剤はマウスピースを変形させる恐れがあるので避けてください。

日常生活に少し制限が加わりますが、健康な歯を手に入れるための一時的な我慢だと考えれば、乗り越えられるはずです。

デメリット7:歯を削る場合がある

マウスピース矯正では、場合によっては歯を少量削る処置が必要になることがあります。

これは「IPR(Interproximal Reduction)」と呼ばれる処置で、歯と歯の間のスペースを確保するために行われます。特に歯並びが混雑している場合、歯を動かすためのスペースが必要となるのです。

歯を削る理由と範囲

歯を削る範囲は通常、片側0.5mm程度と非常に少量です。エナメル質の厚さは平均2mm程度ありますので、適切に行えば歯の健康に問題はありません。

しかし、「歯を削る」という言葉に抵抗を感じる方も少なくないでしょう。特に健康な歯を削ることに不安を感じる方には、精神的なハードルとなることがあります。

対処法と注意点

IPRに対する不安がある場合は、事前に担当医とよく相談しましょう。なぜIPRが必要なのか、どの程度削るのか、健康への影響はないのかなど、疑問点をしっかり解消することが大切です。

また、IPRが必要ない治療計画が立てられる可能性もあります。例えば、顎を少し拡大する方法や、場合によっては抜歯を選択することで、IPRを回避できることもあります。

どのような治療法を選ぶにしても、メリットとデメリットを理解した上で、ご自身に最適な方法を選ぶことが重要です。

まとめ:マウスピース矯正を成功させるために

マウスピース矯正には7つのデメリットがありますが、それぞれに適切な対処法があります。デメリットを理解し、正しく対応することで、効果的な矯正治療を実現できるのです。

マウスピース矯正の成功には、以下のポイントが重要です。

  • 1日20時間以上の装着時間を守る自己管理の徹底
  • マウスピースの紛失・破損を防ぐための適切な取り扱い
  • 自分の症例がマウスピース矯正に適しているかの事前確認
  • 噛み合わせの変化に対する適切なフォローアップ
  • 歯根露出リスクを避けるための精密な事前検査と診断
  • 飲食制限に対応するための生活習慣の調整と口腔ケアの徹底
  • IPR(歯を削る処置)に関する正しい理解と担当医との相談

矯正治療は一人ひとりの歯並びや骨格、生活習慣に合わせたオーダーメイドの治療です。専門医による適切な診断と治療計画のもと、患者さん自身の協力があってこそ、理想的な結果が得られます。

マウスピース矯正を検討されている方は、ぜひ専門医に相談し、ご自身に最適な矯正方法を選んでください。美しい歯並びと健康的な噛み合わせは、あなたの人生の質を大きく向上させるものです。

当院では、マウスピース矯正をはじめとする様々な矯正治療に対応しています。歯並びでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたに最適な矯正治療をご提案いたします。

べっぷゆうこ歯科・矯正クリニックでは、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの矯正治療を提供しています。詳しくは当院ウェブサイトをご覧ください。

【著者】別府 優子  べっぷゆうこ歯科・矯正クリニック 院長

九州大学歯学部卒業後、複数の歯科医院にて一般歯科および矯正治療の臨床経験を積む。
「すべての患者様が安心して通える歯科医院」を理念に掲げ、患者様一人ひとりの口腔状態に合わせた治療計画を重視している。
歯周病・インプラント・矯正治療・マイクロスコープ治療など、幅広い分野の研鑽を続けながら、患者様の「自分の歯を長く守る」ためのサポートに力を注いでいる。

主な所属・修了コース

  • WDC(女性歯科医師の会)所属

  • 船越歯科歯周病研究所 ベーシックコース/マスターコース修了

  • Just Post Graduate 10ヶ月コース修了

  • 下川公一臨床セミナー アドバンスコース受講

  • 近未来オステオインプラント学会

  • 日本臨床歯周病学会

  • 日本顎咬合学会

  • 日本歯科東洋医学会

  • 日本顕微鏡歯科学会

  • 経基臨塾

  • 日本矯正歯科学会

 

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