ブログ

知覚過敏の原因と即効性のある対策~専門医の見解を説明します

知覚過敏とは?その症状と原因を理解しよう

冷たい飲み物を飲んだ瞬間、歯に「キーン」と鋭い痛みが走る経験はありませんか?

これが知覚過敏と呼ばれる症状です。正式には「象牙質知覚過敏症」という病名で、特にむし歯になっているわけでもないのに、冷たいものや熱いもの、甘いものや酸っぱいものがしみたり、歯ブラシが当たるだけでも痛みを感じたりする状態を指します。一時的な痛みではありますが、日常生活の質を大きく下げてしまうこともある厄介な症状です。

知覚過敏が起こるメカニズムは、実はとてもシンプルです。私たちの歯の表面はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、その内側には象牙質という組織があります。この象牙質には「象牙細管」と呼ばれる非常に細い管が無数に存在し、神経につながっています。

通常は、エナメル質や歯ぐきによって象牙質は守られていますが、何らかの理由でこの保護層が失われると、象牙細管が露出してしまいます。すると、冷たいものや熱いものなどの刺激が直接神経に伝わり、あの特徴的な「キーン」という痛みを感じるのです。

知覚過敏を引き起こす5つの主な原因

知覚過敏はある日突然現れるように感じるかもしれませんが、実はさまざまな要因が積み重なって起こります。日常生活の中の何気ない習慣が、知らず知らずのうちに症状を引き起こしていることも少なくありません。

ここでは、歯科医師として多くの患者さんを診てきた経験から、特に多い5つの原因についてお伝えします。自分の生活習慣と照らし合わせながら、チェックしてみてください。

1. 強すぎる歯磨きによるエナメル質の摩耗

「歯をきれいにしよう」という良い意図が、逆効果になっていることがあります。力を入れすぎた歯磨きや、硬すぎる歯ブラシの使用は、エナメル質を徐々に削り取ってしまうんです。

特に歯と歯ぐきの境目は、エナメル質が薄くなっているため、傷つきやすい部分です。ここを横方向に強くこすると、V字型の溝(楔状欠損)ができてしまうことがあります。

多くの方が「しっかり磨かなきゃ」と思うあまり、ゴシゴシと力を入れて磨いていますが、これが知覚過敏の大きな原因になっているんですよ。

2. 歯ぎしりや食いしばりによる負担

ストレスの多い現代社会では、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをしている方が増えています。就寝中に歯ぎしりをしていることに気づいていない方も多いんですよ。

この習慣が続くと、歯に過度な力がかかり続け、エナメル質にマイクロクラック(微細なひび)が入ったり、歯の根元部分に過度な負担がかかったりします。これが知覚過敏の原因となることがあるのです。

3. 歯周病による歯ぐきの後退

歯周病は日本人の成人の約8割が罹患しているとも言われる非常に一般的な病気です。初期段階では自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行していることも。

歯周病が進行すると歯ぐきが下がり、本来は歯ぐきに覆われているはずの歯の根の部分(セメント質という薄い層で覆われている部分)が露出します。この部分は非常に薄くて傷つきやすいため、簡単に象牙質が露出してしまうのです。

4. 酸性食品・飲料による酸蝕症

柑橘系の果物や炭酸飲料、スポーツドリンクなどの酸性度の高い食品や飲料を頻繁に摂取していませんか?

これらに含まれる酸は、歯のエナメル質を溶かしてしまう作用があります。これを「酸蝕症」と呼びます。特に就寝前に酸性の飲食物を摂取すると、睡眠中は唾液の分泌量が減るため、酸の中和が行われにくく、エナメル質へのダメージが大きくなります。

あなたは夜、レモン水やフルーツジュースを飲む習慣はありませんか?

5. 歯科治療後の一時的な症状

歯の治療後、特に詰め物や被せ物を装着した直後に一時的に知覚過敏が起こることがあります。これは治療による刺激で歯髄(神経)が敏感になっていることが原因です。

また、歯のクリーニングやホワイトニング後にも一時的に知覚過敏が生じることがあります。通常は数日から数週間で改善することが多いので、あまり心配する必要はありません。

即効性のある知覚過敏対策

「冷たいものが食べられない」「歯磨きが痛くて十分にできない」など、知覚過敏は日常生活に大きな支障をきたします。できるだけ早く症状を和らげたいですよね。

ここでは、歯科医院で行う即効性のある治療と、自宅でできる対策をご紹介します。症状の程度に合わせて、適切な方法を選んでみてください。

歯科医院での即効性のある治療法

知覚過敏の症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合は、まず歯科医院を受診することをおすすめします。プロの手による治療は、効果が高く即効性があります。

歯科医院では、まず詳細な検査を行い、知覚過敏の原因を特定します。むし歯や歯の割れなど、別の問題が隠れていないかを確認することが重要です。その上で、症状に合わせた治療を行います。

知覚過敏抑制剤の塗布は、最も一般的な治療法の一つです。グルタラール配合のシーラーなどを使用して象牙細管を物理的に封鎖することで、外部からの刺激が神経に伝わるのを防ぎます。効果は即時に現れることが多く、症状の軽減が期待できます。

また、レーザー治療も効果的です。Er:YAGレーザーなどを照射することで歯の表面に膜ができ、象牙細管をふさぐことができます。これにより、しみる症状が緩和されるのです。レーザー治療は痛みも少なく、短時間で終わるため、忙しい方にもおすすめです。

さらに、フッ素塗布も知覚過敏の治療に有効です。高濃度のフッ素を歯に塗布することで、エナメル質の再石灰化を促進し、歯を強化します。これにより、象牙質の露出を防ぎ、知覚過敏の症状を和らげることができるのです。

自宅でできる即効性のある対策

歯科医院での治療と並行して、自宅でもケアを行うことで、より早く症状を改善できます。

まず試していただきたいのが、知覚過敏用の歯磨き粉の使用です。硝酸カリウムや乳酸アルミニウムが配合された歯磨き粉は、象牙細管を通じて歯の神経に伝わる刺激を抑制する働きがあります。

硝酸カリウムは神経の周りにカリウムイオンが浸透し、痛みを感じにくくする作用があります。効果が現れるまでに数日〜数週間かかることがありますが、継続して使用することで症状が軽減されることが多いです。

一方、乳酸アルミニウムは象牙細管を封鎖することで外部刺激の伝達を防ぎ、即効性が期待できます。収れん作用によるタンパク質凝固で細管の開口部を縮小させ、知覚過敏を緩和する効果があります。

知覚過敏用の歯磨き粉を使う際のコツは、歯ブラシに少量取り、しみる部分に直接塗るように優しく磨くことです。特に就寝前に使用し、すすぎを最小限にとどめることで、有効成分が長時間作用します。

また、歯磨きの方法も重要です。力を入れすぎず、毛先の柔らかい歯ブラシを使い、「なでるように」磨くことを心がけましょう。強くこするとエナメル質を傷つけ、症状を悪化させる可能性があります。

食事の工夫も即効性のある対策の一つです。冷たいものや熱いもの、酸性の強い食品を一時的に避けることで、症状の悪化を防ぐことができます。どうしても冷たいものを食べたいときは、前歯ではなく奥歯で噛むようにすると刺激が和らぎます。

長期的な知覚過敏予防と根本治療

知覚過敏の症状を一時的に抑えるだけでなく、根本的な原因に対処することで、再発を防ぎ長期的な改善を目指すことが大切です。

私が日々の診療で大切にしているのは、患者さん一人ひとりの生活習慣や口腔内の状態に合わせた、オーダーメイドの治療計画です。知覚過敏の原因はさまざまですから、その方に合った対策を立てることが重要なんです。

咬合調整による負担軽減

歯ぎしりや食いしばりが原因で知覚過敏が起きている場合、咬合調整が効果的です。これは、歯の噛み合わせを調整することで、特定の歯に過度な力がかからないようにする治療法です。

また、就寝中の歯ぎしり対策として、マウスピース(ナイトガード)の使用も有効です。これにより、歯への負担を大幅に減らすことができ、知覚過敏の症状改善や予防につながります。

歯ぎしりの原因となるストレスを軽減する生活習慣の見直しも重要です。就寝前のリラックスタイムの確保や、適度な運動、質の良い睡眠を心がけることで、無意識の歯ぎしりが減ることもあります。

歯周病治療による歯ぐき健康の回復

歯周病によって歯ぐきが下がり、知覚過敏が起きている場合は、まず歯周病の治療を行うことが優先です。

歯周病治療では、歯石や歯垢の除去を行い、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)を清潔に保つことで炎症を抑えます。重度の場合は、歯周外科治療が必要になることもあります。

歯周病の治療を行うことで、さらなる歯ぐきの後退を防ぎ、知覚過敏の悪化を防止できます。ただし、すでに下がってしまった歯ぐきは自然には戻らないため、露出した部分の保護が必要になります。

生活習慣の見直しによる予防

知覚過敏を予防するためには、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。特に以下の点に注意しましょう。

まず、歯磨きの方法を見直してください。力を入れすぎず、柔らかい毛の歯ブラシを使い、優しく磨くことが大切です。電動歯ブラシには圧力センサーが付いているものもあり、これを活用すると適切な力加減で磨けます。

また、酸性食品・飲料の摂取方法も工夫しましょう。完全に避けるのは難しいですが、摂取後すぐに水で口をゆすぐことで、酸の影響を軽減できます。ただし、酸性食品を摂った直後の歯磨きは、エナメル質が柔らかくなっているため避けた方が良いでしょう。

定期的な歯科検診も重要です。早期に問題を発見し、対処することで、知覚過敏の発症や悪化を防ぐことができます。半年に一度は歯科医院でのクリーニングと検診を受けることをおすすめします。

まとめ:知覚過敏は適切なケアで改善できる

知覚過敏は、日常生活の質を大きく下げてしまう厄介な症状ですが、適切な対策を取ることで十分に改善可能です。

即効性のある対策としては、歯科医院での知覚過敏抑制剤の塗布やレーザー治療、フッ素塗布などがあります。自宅では、知覚過敏用の歯磨き粉の使用や、刺激物を避けるなどの工夫が効果的です。

長期的な視点では、歯ぎしり対策や歯周病治療、生活習慣の見直しなど、根本的な原因に対処することが大切です。特に歯磨きの方法や食習慣の改善は、知覚過敏の予防にも繋がります。

症状が気になる方は、まずは歯科医院を受診して、専門家に相談することをおすすめします。一人ひとりの状態に合わせた適切な治療法を提案してもらえるはずです。

私たちべっぷゆうこ歯科・矯正クリニックでは、患者さんの歯の健康を守るため、知覚過敏の治療にも力を入れています。「自分の歯を少しでも残したい」「自分の歯で健康的に食べたい」という患者さんの願いに応えるため、天然歯をできる限り保存することを治療コンセプトとしています。

知覚過敏でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの大切な歯を守るお手伝いをさせていただきます。

詳しくはべっぷゆうこ歯科・矯正クリニック公式サイトをご覧ください

【著者】別府 優子  べっぷゆうこ歯科・矯正クリニック 院長

九州大学歯学部卒業後、複数の歯科医院にて一般歯科および矯正治療の臨床経験を積む。
「すべての患者様が安心して通える歯科医院」を理念に掲げ、患者様一人ひとりの口腔状態に合わせた治療計画を重視している。
歯周病・インプラント・矯正治療・マイクロスコープ治療など、幅広い分野の研鑽を続けながら、患者様の「自分の歯を長く守る」ためのサポートに力を注いでいる。

主な所属・修了コース

  • WDC(女性歯科医師の会)所属

  • 船越歯科歯周病研究所 ベーシックコース/マスターコース修了

  • Just Post Graduate 10ヶ月コース修了

  • 下川公一臨床セミナー アドバンスコース受講

  • 近未来オステオインプラント学会

  • 日本臨床歯周病学会

  • 日本顎咬合学会

  • 日本歯科東洋医学会

  • 日本顕微鏡歯科学会

  • 経基臨塾

  • 日本矯正歯科学会

 

前へ 一覧ページに戻る
top
WEB予約 0927916487

menu

ウェブ予約

診療時間